Kちゃん。今日は、何かいいことがあったらしく、入室時からごきげんの様子でした。部屋に入ると、いすの上に置かれたタンバリンを二つ手に取り、すぐに二つとも私に渡しに来てくれます。
私は、タンバリンを受け取り両手に持って、Kちゃんと向かい合って座りました。Kちゃんからは、なんだかわからないけれど、「とにかくうれしいのよ〜」と言わんばかりの雰囲気が滲み出ています。
そんなKちゃんは、何かを期待しているかのように、私の顔をじーっと見つめ、何かが始まるのを待っているような様子。私は、Kちゃんの「何か」を探すような気持ちで、まずはKちゃんの弾むような気持ちに応えるようと、「♪にこにこKちゃんのタンバリン♪」と、タンバリンを叩きながら即興で歌い始めました。
歌いながら、ときおりKちゃんにタンバリンを差し出すと、タン!タン!と、今度はKちゃんが勢いよく応えてくれます。「ふふっ」と、Kちゃんから笑い声が漏れると、「あ、この方向でいいんやね。よかった!」と私は安心し、Kちゃんの視線がうつむき、気持ちがしゅっとしぼんだように感じられると、私も一緒に声を落とし、音楽の勢いを少し緩めて、Kちゃんの気持ちに寄り添おうとしてみます。あるいは、続きを探して新しいメロディーを口ずさんでみたり…。
機嫌が悪いときには抗議のニュアンスをたっぷり含んで聴こえる「ん〜っ」というKちゃんの発声も、今日は、歌うように軽やかに聴こえました。同じ「ん〜っ」なのに、不思議だなぁ。
二人で体を揺らしながら、歌う、鳴らす、を繰り返すうちに、たのしい気持ちはどんどん膨らみます。Kちゃんのそばで一緒に体を揺らしていたコ・セラピストさんも、私の歌に声を重ね、間を埋めていきます。
途切れることなく音楽が生まれ続け、いつの間にか、Kちゃんと私たちの3人で、「Kちゃんのうれしい気持ち」を大フィーチャーした空間が、ひとつの音楽に包まれ、守られ、明るく浮かび上がりました。